近年歯周病は生活習慣病として位置づけられ、食習慣、歯みがき習慣、喫煙、糖尿病などが歯周病を悪化させる事が分かっています。
また、歯周病は歯を失うだけではなく細菌が血管内に入り込むことで認知症、脳血管疾患、早産、リウマチ、ガン、糖尿病などの病気のリスクを高めることもわかっています。
主な原因は歯周病菌と言われる細菌による感染ですが、それ以外にも上記の生活習慣、歯ぎしり食いしばりが病気の進行を加速させます。
また、近年の研究でその人の感受性(同じ様な生活習慣、環境下にも関わらず歯周病が非常に進行しやすいタイプと、少しずつ進行するタイプと、ほとんど進行しないタイプの人がいる)が関係していることもわかっています。
この様な理由から歯科医や歯科衛生士のみが行う「お医者様にお任せ的な治療」だけでは、十分な治療効果があがりません。
患者さん個人の生活習慣の改善、自助努力も歯周治療の成否に大きく関与しています。
初期の歯周病は歯茎(歯肉)に限局した炎症(歯肉炎)ですが、進行すると歯肉の深部にある顎骨(歯槽骨)までに炎症(歯周炎)が波及し骨が吸収していきます。
歯肉炎の状態であれば元の健康な状態に戻りますが、歯周炎まで進行するとどんなに優れた治療を行ったとしても完全に元の健康な状態には戻りません。
従って歯周病は虫歯と同じで、病気になってから治すという考えではなく、病気を予防しコントロールしていくということが非常に重要となります。
治療が終わった後も再発しない様に患者さんと歯科医院で管理することが非常に重要になります。
歯周病菌は20歳前後で感染することが分かっていますが、はっきりとした原因はわかっていない様です。
おそらく皿の料理を直箸でとる、同じコップでのお酒の回し飲みする、キスなどが原因ではないかと考えられています。(パートナーの口の中が影響を及ぼすということです)
細菌の量を病気が発症しない範囲にコントロールする、細菌の質を病原性が高まらないようにコントロールする(患者さんの普段からのケアと年数回の歯科医院での除菌処置)、本来体が持つ免疫力を低下させない(生活習慣)ようにコントロールすることが重要です。
歯周病の一番の原因は口の中に常在する細菌=歯周病菌で、その菌が体の免疫力や治癒力を超えると発症します。
歯や口は、消化器官の一部としての役割をもっていると同時に、体全体ともつながっていることも再確認することが重要です。
「口は体の入り口」です。
川の上流が汚れているとその川は下流まで汚れてしまします。
歯周病が口の中に限局しているだけでは、全身にとってはそれほど大きな問題にはならないのですが、長期間慢性化することによって、病原性をもった細菌が血液中に入り込んだり、飲み込まれ口から離れた心臓、脳、肺、腸などの遠隔臓器に行き着き、そこに新たな病気を起こす可能性を高めます。
当院に研修にきた歯科医師のお父様は、日本でも非常に有名な心臓外科医でしたが、「心臓が悪い患者は間違いなく口の中の状態が悪い」と仰っていたそうです。
天皇陛下の心臓手術を執刀した天野先生も全く同じことを書かれています。
私が大学病院勤務時代に老人ホームに歯科治療にいっていた時、認知症の方のほとんどはご自分の歯がない方達でした。
(2019年アメリカでは、脳内に入り込んだ歯周病菌が持つ酵素を中和する薬が認知症治療薬として治験段階に入ったそうです)
またご自分の歯で噛むことは脳の活性化に大きく関係していることも分かっています。(歯周病は歯を喪失する原因のNo.1です)
歯の数と認知症に相関があることがわかっています。
歯周病を予防し、コントロールすることは、単に歯や口の健康を守るのみならず、全身の健康をも守ることにつながり、人生80年の高齢社会を豊かで快適に過ごすために極めて重要となることを理解しておいてください。 私は歯周病専門医としてこれからも研鑽を怠らず、皆様の健康に貢献することを自分の存在意義として世界基準の歯科医療を提供していきたいと考えています。
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